2010/01/03
旧年中は大変お世話になりました。本年も精力的に現場に出向き、皆様とともに活動してまいります。どうぞよろしくお願い致します。
2010年、新年を迎えるにあたり、大変楽しみな事があります。
それはNHK大河ドラマ「龍馬伝」です。

高知桂浜に立つ坂本龍馬像
私が影響を受けた人物として司馬遼太郎先生を常に挙げていますが、その中でも学生時代に読んだ「竜馬が行く」は自分の人生に大変大きな影響を与えました。とりたてて大きな夢も抱けず、悶々と過ごしていた多感な10代の私を奮い立たせるには十分すぎるものでした。
志を持って土佐藩を脱藩し、亀山社中を興し、日本の未来のために奔走した龍馬。私自身もそれに続けとばかりに、勤める予定の会社を2年で脱藩(退職)して25歳で自分の亀山社中(会社)を興すという夢を描いて社会人になりました。予定の2年が経ち、自分に課した約束どおり脱藩(退職)しましたが、会社の設立などそんなにうまくいくものではありません。金も社会的信用もなく、社会の荒波に揉まれながら、ただただ夢ばかり大きいだけで、何もできない自分の無力さを痛感しました。
家を飛び出し、何もかもなくし、生きる意味を失いかけながら、数週間かけてたどり着いたのが高知桂浜の龍馬の銅像でした。

21年前、野宿をしながら辿り着いた桂浜。写真左がテント
深い挫折感の中、どこに向かって何をしたらいいのか、出口の見えない私に、その銅像龍馬は、
「何でも思い切ってやることですよ。どっちに転んだって人間、野辺の石ころ同様、骨となって一生を終えるのだから。」と、語りかけてくれるかのようにどっしりと温かく迎え入れてくれました。
司馬遼太郎が描く坂本龍馬の言葉は今でも私の心にたくさん残っています。
「世の人は我を何とも 言わば言え 我が成す事は 我のみぞ知る」
この言葉を胸に、世間にいろんなことを言われながらも、予定より3年遅れの28歳で、念願の会社を設立することができました。
今も原点を見つめ直したいときなどに龍馬ゆかりの地を訪ねています。
「全霊をあげてあなたの心を書く」
司馬先生は「竜馬がゆく」連載にあたり、桂浜に立ち、遠くを見つめる龍馬像の前でそう呟いたそうです。司馬先生が描く龍馬は、多くの若者に志の大切さや、独立自尊の精神を教えてくれました。
龍馬の銅像が建立されてから60年の還暦を迎えた昭和63年、司馬先生はこのような言葉を龍馬に伝えました。

司馬先生が龍馬に送ったメッセージ
メッセージ ~銅像還暦によせて~
司馬遼太郎
銅像の龍馬さん、おめでとう。
あなたは、この場所を気に入っておられるようですね。
私もここが大好きです。世界中であなたが立つ場所はここしかないのではないかと、私はここに来るたびに思うのです。
(中略)
「遠くを見よ」
あなたの生涯は、無言に、私どもに、そのことを教えてくれました。今もそのことを諭すがように、あなたは渺茫たる水のかなたと、雲の色をながめているのです。
あなたをここで仰ぐとき、志半ばで斃れたあなたを、無限に悲しみます。
(中略)
ふつう、旅人の目的は、その人個人の目的でしかありませんが、それでも彼らは残念、念を残すのです。
あなたの目的は、あなた個人のものでなく、私ども日本人、もしくはアジア人、さらにいえば人類のたれもに、共通する志というものでした。
あなたは、そういう私どものために、志をもちました。そして、途半ばにして天に昇ったのです。その無念さが、あなたの大きさに覆われている私どもの心を打ち、かつ慄えさせそしてここに立たせるのです。
さらに私どもがここに立つもう一つのわけは、あなたを悼むとともに、あなたが、世界中の青春をたえまなく鼓舞し続けていることに、よろこびをおぼえるからでもあります。
「志をもて」
たとえ中道で斃れようとも、志をもつことがいかにすばらしいかを、あなたは世界じゅうの若者に、ここに立ちつづけることによって、無言で諭しつづけているのです。
(後略)
竜馬が今の時代を生きていたら、今の社会や私たちになんて語りかけるのだろう。
そんな思いを持ちながら自分の生き様を見つめなおす年にしたいと思います。